昭和４５年１１月２９日　朝の御理解



　御神訓　一、「障子一重がままならぬ人の身ぞ。」
　　　　　一、「まめなとも信心の油断をすな。」

　障子一重が、ままならぬ人の身であるがゆえに、愈々信心の油断をしてはならないという事ですね。障子一重がままならぬ、それが人間のいわゆる実相である、実態である。そこに元気だからというて、お金があるからというて、決して信心の油断を してはならんぞと言われる。仏教で申しますと無常観と。無常の風は時を嫌わんと。本当に元気だからと言うて、決して当てになるものではない。
　無常の風が吹いてきたら、いつでも、もうしばらく待って下さいということはできん、これは無常観と。ところが金光大神の道は、無常の風が時を嫌わんと言うが、金光大神の道は、無常の風が時を嫌うぞと。そういう所に、御道の信心の有難さを、もう取分け感ずるわけですよね。そこの所を、お繰り合わせというふうにも申します。ならぬ事がなって行く。助からんはずのものが、助かっていく。
　ですから、そういう、おかげを受けていくという事が、そのために、信心の油断をしてはならないというわけです。信心の油断をすなと。信心の油断をしないということは、いつも、心に神様を念じておるとか、心にかけておるということなんですけれども。ただ、金光様、金光様と、心の中に唱え続けておるというような事ではない。私は、信心の油断をしてない人の姿というものは、いつも感謝がある。
　神様に対する 感謝の念をいつも持っておる。いつも、心の中に反省の心を持っておる。そういう感謝の心と、いわば、いつも自分を、強く見極めようとする心。そしていつも、反省させて頂いておるという、そういうことが信心。ままよとも信心の油断をしていない人の姿であると。いわゆる、これで済んだとは思わんというような思い方が、いつも心の中にある。
　ですから神様は、それでもやっぱり私共は、油断をしておる事が多いです。そこで神様はね、御道の信心の、いわば有難いという事は、信心にちょっと油断がでけとると、神様が、ほらほら油断しておるぞと言わんばかりに、気をつけてくださる。そこではっと気がつかせて頂いて、信心の油断をしておったなと思うて、そこの所の届けあわせが出来る。そこにお詫びがあったり、反省がなされたりするわけなんです。
　そういう例えば、生きた信心。生活の中に神様がいつも我とともにあって下さって、神様がいつも、こりゃ油断をしとると、ほらほら転ぶぞと、ほらほら怪我するぞと、というようにですね、口で言うて下さらんばかりに、そういう生きた働きというものを、身辺に感ずる事が出来る。そういう信心がね、そういう信心がなされる。いわゆる、感謝と反省と。ですから、実際実生活にあたらせてもらうと、実生活の中に信心を求めてまいりますとですね、はぁおかげを頂いた。
　はぁこれもおかげと言う様に、感じさせて頂く事が沢山あるわけです。実際に信心に取り組んでみると。又実際取り組んでみるとです、本当に相済まん事だなと。こんな事ではいけないと言った様な反省させられる、その場面というものが沢山ある訳です。そういう生き生きとした、いわゆる神様を身近に感じての信心生活が、でけてまいります所からです。障子一重がままならぬ人の身ぞとなるほどそうなのだ。
　障子一重向こうの事がわからない。いうならば風前の灯のような私共。いつ無常の風が吹いてくるか解らない。そういういうならば中にありながらです。おかげが頂けれる、おかげが頂けれる、というその強い心がね、心がそこから湧いてくる。そこにね御道の信心の、有り難さがあるようですね。本当にそうですよ。これは私が半年間の兵隊生活をさせて頂いた時にもういよいよ、今晩は駄目だ、今日はもういけないかなと思うような事に、何回か、そういう危機にさらされた事がある。
　例えば、汽車に乗って行きよると、もう、山が両方からこうきとる。その、汽車の転覆を図られて、もう汽車が動かなくなった。そして、山の両方、両方からバンバンバンバン撃ってくるんですからねぇ。そういうような事も一遍あった。そらもう、真の闇夜の、夜中に出撃させて頂いて、擲(てき)弾筒という、擲弾筒の、千に一発か、万に一発かといったように、炸裂するのが、その中に必ずあると言われる。
　そういう擲弾筒にあたって、その炸裂した為に、もうその辺が昼のように明るくなった訳です。ですからはぁあすこに日本の兵隊がおるというとが分かったもんですから、もう、それこそ雨あられ、そこに集中攻撃受けた事がある。何人もの戦友が亡くなった。そて、私共はそういう中を、次の駅まで行かなければならないと。もう負傷した兵隊を、交代でおんぶしながらね、その次の駅まで行く時なんかは、もういよいよ今夜は難しいなぁと、こう思うような事であった。
ところがもう、足はそれこそ、がたがた震うごたる。ドンドンその撃ってくる中を、もうそん時ゃ真の闇ですねぇ。鉄道線路に出てから、そのこうやってその負傷したのをおんぶしてる。外套を着てる、ちょっとこうあたるとね、もう外套のその腕が無い、腕が無いのが、真っ暗やきん分からん。そういうのをね、交代でおんぶしながらね、その次の駅まで行った時なんかは、もういよいよ今日はもう、ひょっとすると、全滅になるかもしれない。もう足は、もう、がたがた震うごと怖い。
　けれどもね、不思議に、直ぐ私の心の底から湧いて来るものです。いや、私だけは助かる、私だけは助かるという心でしたよ。もちろん、それから、みんな助かったわけですけれどもね。何人かの、戦死者が出けたり、負傷者がでけただけで、お神様のおかげを頂いたわけですけども、そういう危険を晒されていながらもですね、心の底からです、信心を頂いておるということは有り難いと思う。
　そういう、いわば土壇場の中んでもね、自分だけは助かる。ま考えてみりゃね、まいかにも、その利己主義のようですけども、そんな心が実際に湧いてきた。死なんどきゃ助かる。自分だけは助かる、といったような心がね、こう湧いてくるんですよ。足はがたがた震うごと、まぁけれども心の底に、何とはなしに、力強いおかげを頂きたい。それが私は、、生きた神様を信心させて頂いておる者の値打ちだと思う。
　そこにはです、まめなとも信心の油断をすなと。まあそん当事の事を思うて見ると、油断だらけの信心ではあったと思うけれどもです。いつもその、神様が身近に付いてござるといったような感じがする。いつの場合でも、その、不思議におかげを頂いておる。だから、いうならば、自信のようなものがでけて。他の者は、全滅になるかもしれんけれども、自分だけは助かられる、といったようなね、不思議な力が湧いてくる。
　障子一重がままならぬ人の身ではある、というその事実はねこれは、そうなのですけれどもそういう中にあっても、神様のいわば御守護を受ける事が出来るという、一つの信念ですね。いわゆる宗教的信念というのが、だんだん強なってくる。段々信心が本筋になってきて、本当の事になってきて。たとえば今年の信心のスローガンである、世のお役に立ちたいと言った様な願いが、本気でなされるようになってまいりますとね、その願いその思いはいよいよ強うなってくる。
　神様に喜んで頂けれる、お役に立つ私にならせて頂こうという願いが強うなってくるとです。神様がおかげを下さらんはずはないと言った様な、強い信念が生まれてくる。昨日竹葉会でした。もう本当に私は有り難いと思った事は、もう私のぎりぎりの信心を、一生懸命にしばらくの時間でしたけれど話させて頂いた。その話がね、若い婦人の方達にもう私の言うことが、皆んな解って頂けれるという感じでした。
　大変ないうならば、私のぎりぎりの信心ですから、難しかろうとこう思う。それをね皆さんがそうですね、そうですねと言うて、まあ解って下さっておるような雰囲気の中に、お話させて頂いたんですけれども。理解力が皆さん大変ついてこられた。昨日大変そういう意味でおかげを頂いた。そん中に佐田さんが発表しておられました。あちらの遠いご親戚になるところに、お医者さんがある。もう六十からなられる。
　お医者さんですから、患者さんが、いよいよ駄目だと、いわゆる、臨終に立ち会われた事も、もうそれこそ沢山な数である。最近、その事に対して、非常にこの、一つの霊妙というか不可思議というかね、人間の命の不思議さというものを感じられるようになったと。心に一つの、拠り所と言った様なものを持った人の臨終は非常に美しい。けれども無神論とでもいうかね。
　神も仏もあるもんかと言う様な生き方をしておる人達の、臨終なんかに立ち会って、これはただ事ではないぞと言った様な、まあ臨終の場合、臨終の研究者とでも言おうかね。人間が、いよいよ、この世に さらばをしていく時の姿というものにです。非常な不思議なもののある事に気付かれたという話をね、まあなさっておられます。ですからたとえば、今日の御理解から、障子一重がままならぬ人の身ぞと。
　なるほど、仏教の一つの無常観によく似とりますけれども、実は、本当に確かにそうだと。人間の知恵力では、どうにもでけないものがいっぱいある。本当に障子一重も、この頃がわからんのだけれど、神様の御心がわかり、御心に添い奉るという生き方。そういう生き方をさせて頂く所に、感謝があり、確信があり、いわゆる、安心がある。だから臨終の時だけではなくてです。
　そこに私共が、日に日にお生かしのおかげを頂いておる中にもです、信心の有るもんと無いもんの違いがはっきりしてくるというのが、金光様の御信心なんだ。死ぬる時でなからなきゃら解らんと言った様なもんじゃない。日に日にが確信にみちた生活が出来る。勿論そういう確信にみちた。なら人間は一度は必ず死ななけれなりませんから。けれどもそこにはです、生きても死んでも、天と地はわが住みかと思えと言った様な大変な事柄が、何とはなしに解ってくる。
　死んだからというて、神のお世話にならんわけには行くまいが、死に際にも願えというような、心強い信心が身に付いてくる。その辺の所をね、私は御道の信心によって体得した。だからそれが一つ間違いますとです、その辺のところがまだまだ大変おかしな事になってくるんです。いわゆる御利益信心。ただ御利益のところだけがわかってくると。だから、夕べの御理解じゃないけども、その本当な障子一重がままならない人の身であるというような事がわかってくる。
　そこに自分の命が信仰を求めるという。御利益を求めるという事になってくるから、あっちはもう本当に有り難い勿体無いで、あげん一生懸命合楽に参りござった。と言う様な人達がね、スパッと信心をやめてしまうという人達がいくらもある。もうこの人は絶対動かんと言う様な、熱烈な信心しておった人たちが、さっぱりやめてしまう人達がある。これはね、その人の命が、信心を求めていなかったからです。
　障子一重がままならぬ人の身であるといった様な自覚が出来ていなかったから。いわゆる、御利益だけを求めておったからです。だから御利益が自分の思うようにならなかったら、信心を、ぱっと、やめてしまう。だから、そういう、まあいうならばです、金光様の御信心は、そういうおかげが受けられますから、そういう例えば、ほんなら、欠点が無いじゃないわけですね。
　金光様の御信心は、そういう御利益専門の神様のような頂き方をするとです、そういうひどい事になってくる訳なんです。ですからそういう御利益もさることながら、信心の本当なぎりぎりのところ。やはり昔の大宗教家と言った様な方達は、そういう所がもう誰よりも素晴らしく出来ておったと思いますですね。真宗浄土真宗の親鸞上人という方が、宗祖ですけれども、その方が小さい時にあれは十二歳でしたでしょうかね。
　家庭の事情でお寺さんに預けられる事になり、そのお寺さんでいわゆる、お釈迦様のお弟子になるというわけなんです。そこでお師匠さんが、それを引き受けて下さる。そこで行ったその日にですね、得度を受ける事になる訳です。得度に頭を丸めるわけですね。いわゆる仏様のお弟子になる。それでもう今日は遅いから明日その得度の式をしようと、そのお師匠様が言われた時にですね、親鸞上人様のいわゆる幼少のたい、小さい時に歌をもって示しておられる事はね、庭にいっぱい桜が咲いておった。
　その桜を指差しながら、その歌を作られた「明日あると思う心はあだ桜、岩の嵐に散らぬものかわ」という歌を示された。もうお師匠さんはびっくりされた。それこそ永年の信心させて頂いてもそこが悟れないのに、是は大変な所謂大宗教家になるぞと言う様なものが、そういう兆しを感じられた。それはお前の言う通りだからほんなら、今夜のうちに得度をしようと言うて、その頭を丸められたというお話があります。
　あのように見事に咲いておりますけれども、今夜もし嵐があったら明日はもう散ってしまっておるかもしれません。お釈迦様のお弟子にならせて頂きたいとこう、発願したからにはもう一時もはよう、どうぞお弟子にならせて下さいという訳である。段々上人様としての修行が出来られて、沢山なお弟子ができられ、沢山な人が当事やはり生き仏様のように、崇められるほどしになられた。
　そうなって行きゃなって行くほどに、又それに対する反発というかね、反対のいわば当事の新興宗教ですから、今まで従来あった信心をしとる人達から、大変なねたみを受けたりそしりを受けたりされた時代があったわけですね。その時分に弁円というお弟子がありました。その弁円という人はもとは山伏である。そしてその当事の新興宗教である所の、浄土真宗をね潰そうとまあ色々企んだ訳です。
　そしてその中心であるところの上人様の命を狙おう、亡きものにしようとした訳です。それでもうそれこそ一晩中かかって上人様の、他所に出られた帰りを待ち受けて、殺そうと致しましたけれども、どうしても殺す事が出来なかった。山の峰にご照合の声が聞こえる、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と。南無阿弥陀仏と唱えながら、通っておられるから、峰のほうへ行くともう谷の底の方に、南無阿弥陀仏の声が聞こえた。
　だから急いで下のほうへ降りると、もう上人様は峰の上を歩いておられたと言った様な、もう実に不思議なね働きの中にとうとう一晩がかりで、上人様をねいわば、殺すという事が出来なかった。そこでとうとう朝方ですね、本当この人はもう大変なお徳を持った人だというので、自分の夢を投げ捨てて、上人様の前に平伏した。そして自分も仏教の道を教えてもらえる。
　いわゆる自分を弟子にしてくれと言うて頼んだと言う、そのそういう因縁を持ったところの、お弟子さんであった。ある時にお師匠である上人様が、あるお出でられた時に、お帰りが遅いから、途中までお迎えに行った。それが丁度自分が弟子入りを願った、そういう事件のあった、その山道の途中まで迎えに行った時に、その弁円がね、その歌を作った。そして、自分の過去の反省で。
　又は今日こうしておかげを受けておる事がです。それこそ感涙に咽んでその過去の事を思うたという訳です。その歌の中にね、野も山もなんやったかね「野も山も今も昔もかわらねど　変わり果てたるわが心かな」という歌でしたね、確か。野も山も昔と一つも変わっていない。この道もあの時に今の師匠であるところの、上人様を狙った場所である。本当に恐ろしい事を考えたものだと。
　仏様のお弟子にならしてもらい、上人様のお弟子ならして頂いて、今日その自分が上人様をお迎えにこの位置まで出てきておるが。なんと変わり果てた自分であろうか、有り難い事になってきた自分であろうかと言うて、感涙に咽んだという歌なんです。私は今日、障子一重がままならぬ人の身ぞと。まめなとも信心の油断をすなと。信心のやはり基礎になるもの、いわゆる、根本になるものは、やはり自分自身の、障子一重がままならぬ人の身であるという自覚。
　そこでまめなとも信心の油断をすなとこう言われる。ほんなら信心の油断をすなという事は、どういう事かというとそれは私は、感謝と反省という風に申しました。上人様がいわゆるお小さい時に、すでに障子一重がままならぬ人の身であるという事実を悟られたと。どんなに綺麗に咲いておっても、一夜の嵐に散ってしまうかもわからん。それがそういう儚いいわば、ものが人間のいわば命であると悟られた。
　そこから一時でも早う本当な事がわかりたい、本当な道を知りたいと、お弟子入りを願われた。又そのお弟子の弁円が、そういう悪い企みを持つほどしの人であったけれども、いよいよ上人様のお徳によってお弟子入りをした。そこに弁円の改まりがあった。感謝があった。日々の反省がそこに感じられる。いわゆる仏の道を学ばして頂くということにも、そういういわば反省いわる感謝。
　又は人生の人間の重大事である所の姿勢の、死生観。人間は本当に今日あっ、明日あるかないかわからないのが、人間の寿命。これは若いから又は年を取っておるからという、これは差別は無い。老少不定である。そこでそういう素晴らしい大変な事を、一時でも、わからせて頂いて、神様のおかげを頂かなければ立ち行かんという事実を悟らして頂くというのが御道の信心。そこから修行が始まる。
　そこから日々の感謝の生活、改まりの生活がある。そこから御道の信心によって頂けれる所の、生き生きとしたいわば安心の心と言うか。ほんなら私が今日申しましたね。今日はもうみんな全滅するかもしれん。今日はみんなやられるかもしれんと言う様な中にあっても自分の心の底からです。とにかくとにかく理屈じゃない、湧いてくるもの。いや自分だけは助かる事が出来るぞと言った様なね、不思議な力が湧いてくる。
　そこの辺の所がね、私は御道の信心の、いよいよ生き生きとした信心。なるほど障子一重がままならぬ人の身ではあるけれども。私共が神様の心がわかり、世のお役に立ちたいと言う様な、一念を燃やしての信心をさして頂く所からです。それにはそれにいうなら、引当のように頂けれる心が、自分はおかげがまあ極端な事いうと先日ね、お月次祭に御参りをしてくるある方が時間が遅くなった。
　それで運転手さんに言うた。今日はもう飛ばせられるだけ飛ばして下さい。今日は絶対、あの、途中でつかまるような事は無いと、その運転手さんに言うた。ほーれでもう、それこそ出せるだけのスピード出して、その、おかげ頂いて、ちょうど、御祭りに間に合わせて頂いておかげを受けたという人があった。だからそういう事を私は、奨励するわけじゃないですけれどもね。
　そういうものが湧いてくるのです。それは心が神様へ向かっておる時ならば、絶対そういうことは無いといったような確信が生まれてくる。そういう力強い生活がでけるという事がです、御道の信心なんです。為にはまずいわゆるその根底になるもの。人間の本当の姿実相。それは障子一重がままならぬ、というのが人間の本当の姿だ。言うようなことを申しましたね。
　　　どうぞ。